2011年11月28日
なんば焼き1 仕込み編
スタッフMR2です。
白浜町の芝菊商店さんへ、田辺・西牟婁地域に江戸時代から伝わる名産品「なんば焼」「ごぼう巻」の取材に行ってきました。
3代目店主の芝崎照男さんにお話を伺いました。

「なんば焼」は、一説にお殿様が江戸へ持っていくお土産にするため、魚の身をほぐして焼き固めたのが始まりと言われています。
県外出身者のめはりは「かまぼこ」と聞くと半月型の外側がピンク色のものを思い浮かべるのですが、こちらでは「なんば焼」も「かまぼこ」と呼ばれています。
原料はエソ(マエソ)を使用します。
前日の夕方に水揚げされたエソを早朝からさばき始めます。

6月の時期のエソは、脂が少なく旬から外れているのですが、『この時期だからこそ美味しく仕上げることにこだわりを持っている。』とのことです。
エソは、鱗を取り地下水で洗います。
魚を加工する際の水は、すべて天然水が使われていて『美味しいかまぼこには、美味しい水が大切です。』と芝崎さん。
熟練の包丁さばきで次々と頭が落とされ、内臓が取り除かれます。

再び水で洗い、中骨、身、皮の5枚におろします。
この皮はごぼう巻きに使うので、旨みを出すために少し厚めにそぎとります。


25年使い続けている包丁は研がれ続けて、今では三日月のようになっています

頭と内臓以外の部分を魚肉採取機にかけ、骨を取り除きます。
この機械が導入された昭和51年までは、スプーンで身をこそげていました。

小骨も取り除かれた身は水に2回さらします。
この時の水温は7.6度。
温度が高くなるとたんぱく質が変質して、弾力のない硬い「なんば焼」になるのだそうです。
何度も温度を測り、気を配りながら作業は続きます。

↑手前:2回目のさらし、奥:1回目のさらし。
水にさらすと血と生臭さが抜け、白くなって行きます。
さらしが終わった身は、圧搾機にかけて水気を切ります。

この工程も昔は手絞りで、ドンゴロスと言う布袋が使われていました。
身は冷蔵庫で、1日寝かせます。
その合間に、届いた新鮮なごぼうの下ごしらえに入ります。

それぞれが手作りした竹の定規を当てながらスパスパと切り、五右衛門風呂のようなお釜に並べます。

この釜は、鋳物ですが今はもう生産がなく、この釜で最後なのだそうです
『壊れたら次はステンレスやろなぁ』
長く続いてきた歴史の中で、こうして新しいものへと変わりながらも、「なんば焼」は今の姿を留めています。
ごぼうが柔らかくなるまで茹でたら、1日目の工程は終了です。
次回は、練りと成形そして焼き上げです